人力飛行機ソロモン

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【市外劇 人力飛行機ソロモン】 レポート 7番 長井江里奈



平均年齢30才をちょっぴり超えた私達が恥ずかしげもなく、むしろ誇らしげにジャージを着るには訳がある。 そもそも何故ジャージなのか? 団体としてのアイデンティティとか、だって部活だしとか、お洒落だからとか諸説あるけど、一言で言うと「目立つから」である。 特に街中では良く目立つ。 結構生地が薄いもんだから、寒空の下、モノトーンの人々が行き交う中にジャージが連れ立って佇んでいようもんなら、明らかな場違い感が醸し出されて、人々はつい足を止めて何か始まるのかと期待するのだ。

しめしめである。
ジャージを着るという行為一つで人々の足を止め、そこに何らかの磁場を生み出す事ができるのだ。

その時、街のその一角は劇場と化す。 私達が着ているのは、ジャージと言う名の舞台装置なのだ! ジャージを着ると言う事は、見世物である自分を意識し、かつ、そこに足を留めた人を一つ楽しませてやろうじゃないの!と言う決意の表れNA・NO・DA!!!ワッショーーーイ! そうだ、日常の風景の中にこそ劇場はある!YES!WE!CAN!

あれ? 何だか誰かの言葉みたいになって来たぞ?
そう、書を捨てよ街へ出ようの寺山修司なのです。 あとちょっとオバマ。

今回、寺山修司の市外劇「人力飛行機ソロモン」に、演劇でも舞踏集団でもない私達まことクラヴが一枚噛む事ができたのは、一見意外なようで実は必然だったかも知れません。 何しろ、今回披露した「横断歩道の渡り方」は、結成当時から各地でやって来たパフォーマンスの拡張版だし、このところ「かぶり物」というニューアイテムを手にした私たちは、それこそ移動式舞台装置状態と言っても良いのですから。

今回私たちは、ソロモンの本編に参加する事は諸事情により叶わなかったため、同時多発演劇の一部として「大街道商店街」とそこからつながる「銀天街」「松ちか」で独自のパフォーマンスをしてきました。12時過ぎから予定された6時を越して。延々。

あぁ、商店街。 大好きです。大得意です。 スピーカーから流れる歌謡曲をBGMに、若い子がおしゃれして洋服を買いに来たり、おばあちゃんが漬けものを値踏みしていたり、名物の団子屋に行列していたり、それぞれが思い思いの時間を過ごしていつつ、みんなほんのちょっぴり浮き浮きしてる。浮き足立ってる。 そのほんのちょっぴり浮いた隙間に漂う幸福感を素早くすくいとって、代わりにこそっと小さな驚きと喜びを差し込むのです。

ところが! この日の松山ははなっから異常でした。 正午の市街劇開始とともに鳴り響く大音量の音楽に台詞、商店街を貫くように敷かれた赤絨毯、その上を練り歩く白塗りに黒装束の大集団。さらにそれを取り囲むたくさんのお客さんの頭には、チケット代わりの正岡子規のお面が!

怖い!怖すぎるよ!無数に無表情なモノクロ子規。 中にはちょっと小粋な斜めかぶりにされて、憮然とした表情が小生意気な感じに見えちゃったり、目の所に空いた穴からギョロリとリアルな目が覗いてたり、そんなお客さんと道行く人が写真撮り合ってたりして、皆完全に市外劇の一部になっちゃってます。意識しちゃってます。 これはもう、ちょっぴりとか浮き足とかそんなもんじゃありません。 大・なんのこっちゃ大会 in 松山の始まりです。

根っからのサービス業を自認する私達としては、もうこりゃ負けてられません!! 舞い上がったお客さんの心の高さ分だけのパフォーマンスをしなくては!
まこクラの造形作家、百番の力作かぶり物を目深にかぶり、三越のショーウインドウに落書きする所から始まって、大小様々な何のこっちゃを振りまきながら商店街の端から端まで練り歩きます! 道行く人と踊ってみたりプリクラ撮ったりモグラ叩いたりお団子食べたり昼寝してみたり、思いつくありとあらゆるちょっかいを出しながら松山の人々に遭遇して行きます。




色んな反応があって楽しいね。たくさん写メ撮られたけど、みんなすぐ消したりしてないといいな。

はい、で予定時間をあっさりオーバー。だいぶオーバー。 オーバーしすぎて最後に予定してた道後温泉でのパフォーマンスできませんでした。 はっきし言って浮き足立ってたみたいです。私達。

そのあとは、エスカレーターでスケッチブックを使った5コママンガ的パフォーマンス(やや受け)、道案内が脱線して膨張してゆく「街ダンス(ガイダンス)」(受け)、信号が青になる度に横断歩道で何かする「横断歩道の渡り方」(大受け!)2台の台車に乗り込んで、勝手に松山の応援演説をしながら練り歩く「ミス銀天街」(人いな過ぎ)。




こういうレポート書く度に毎回思うのですが、自分達のやった事を言葉で説明するのってほんと空しいです。 だからやめます。 今まで色んな場所で色んな事をしてきた私達ですが、結成当初の野外活動は当然全てゲリラであり、いつ怒られるかと若干期待しつつ、ドキドキしながら行ってきました。 その昔、寺山修司が現役で市外劇をやっていた時には、警察沙汰もざらだったと聞きます。 ところが今回の松山版ソロモンは、松山市の主催です。 立案者である榎本了壱さんや演出家のJ.A.シーザーさんの手腕もあるでしょうが、それにしても行政がこの企画を立て、そして実行したと言う事に敬服すると共に、時代の変化を感じます。 白昼堂々あんな事をすれば、当然出るはずの様々なクレームを、市役所が受けるのです。
私達は、面白いと思える場所に活動を展開していくだけですが、公の場で堂々と自分達の行為に没頭できる喜びを感じる一方で、場が用意され、何のリスクも負わなくて良い事に若干の物足りなさを感じる事も否めません。 しかし、この市外劇が元々持ってた「やばさ」みたいなものを今再現しようとしても、それは単なる模倣に過ぎず、オリジナルの持つ熱は届けられないのでしょう。 やはり、遅れて来た私たちとしては、過去の偉人に思いを馳せつつ、ちゃっかりそこに乗っかって楽しんじゃうぐらいがちょうどいいのかも知れません。
まぁ、実際はついたその日からうまいもん食べまくって飲みまくって、パフォーマンスも楽しくって、打ち上げも盛り上がりまくって、その後の道後温泉も最高に気持ちよくて、また一つ楽しい事できちゃって良かったね、みたいな感じなんですけど。
百番齋藤君にとってはもう少し特別な意味があったようで、天井桟敷の看板女優、九條今日子さんや蘭妖子さんと照れながらツーショット写真を撮りつつ、「百年たったら帰っておいで 百年たてばその意味わかる」という寺山修司の言葉にインスパイヤされた故の背番号だったとか何とか、私たちも初耳の情報を告白してました。良かったね。

あ、それから、今回「後輩」こと王下貴司が8番としてデビューしました。 地味なデビューでしたが、実は結成から7年目にして初めての新入部員なんですよね。諸先輩方にさんざん弄ばれてますが、どこまで舞い上がっていけるか、私たちも楽しみにしたいところです。 ともかく、松山最高に楽しかったでーす!! また行きたい♪



『市外劇 人力飛行機ソロモン』  2008年11月24(月・祝) 松山市内各所
主催=まつやま市街劇実行委員会 (松山市、特定非営利活動法人シアターネットワークえひめ、特定非営利活動法人クォリティー アンド コミュニケーション オブ アーツ)
共催=愛媛新聞社 ほか

 
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